●● OH!MY GIRL,OH MY GOD! --- act2 ●●
薄く開いた目蓋越しに、アイボリーの白と、輝く白。
目に映ったものが、見慣れた天井と、それを背に自分を覗き込んだ銀髪の恋人だと、僅かの間隙を置いてカイジの脳が視認した。
「………ゆ…き……?」
何故か声が掠れている。まだ焦点を結びきらぬ散漫な意識の下、苦しげに歪み頬を濡らす男の頬へ、縫い目のある手が押し当てられた。
「……な、に…泣い…て……?」
一瞬、落雷にでも遭ったかの如く竦んだ男の体が、一呼吸と半分の間を置いて、触れた優しい手を掻き抱き。自ら頬に押し当てて一層苦しげに涙を溢れさせた。
「……ジさっ……カイジさんっ……カイジさんカイジさんカイジさんっ……ゴメン。ゴメンなさい。ゴメンっ……酷いコトしてっ……ゴメンなさいっ」
「……?……―――ッ」
最初、平山が何を詫び、何故そんなにも苦しげに咽び泣くのか、本当に解らなかった。
が、重ねた手の温度が呼び水となり一息に昨夜――窓の外は、未だ未明の蒼に覆われているので、数時間前と言ったほうがよいかも知れぬが――の陵辱の記憶が蘇る。
「――っかないでっ!行かないで!離れないで、オレから離れないで……カイジさんっ!」
短い悲鳴と共に、引きかけた手を、それ以上に切迫した悲痛な叫びと共に、握り締めた平山の手が引き止める。
「…ヤ……ダ………放せよ……もうっ……」
捕らえられた片手を残し、出来る限り身を引いて平山から距離を取ろうとする。怖ろしかった。圧倒的な力で自分を捻じ伏せ、犯した男が怖ろしかった。
普段どれほど気が弱かろうが優しかろうが、紛れもなく目の前の男は「雄」なのだと、一夜の出来事でカイジは文字通り身を以って思い知らされていた。
「もうしないっ……もうしないから…もう酷いことしないからっ……オレから離れないでっ……」
手首を掴む指の力とは真逆の、弱々しく嗚咽に潰れ、弾んで裏返った平山の声。
「ゴメンなさい…カイジさん……酷いことして…っ……あの、カイジさん、痛くない?痛いところとか無い?」
痛めつけた本人が、涙を溢れさせながら、カイジを伺う。白々しいと断じるには余りに悲痛な問いかけだった。
「………手、痛い。………放せ、よ…ユキ…逃げねぇから」
「…う、う…ん」
一瞬強張り、けれど「逃げぬ」と諭されて、ぎこちなく弛緩した指が震えながらとカイジの手首を解放した。