「彼が和服になったワケ」中禅寺×関口(学生編)
☆中禅寺キャラ崩壊注意☆
大戦の予兆を孕み、僅かに世の中の空気が強張り始めた時代の中ではあったが関口巽と中禅寺秋彦は学生時代を各自それなりに謳歌していた。
寮で同室となった縁が始まりだった。
中禅寺は自分の腕の中でくうくうと愛らしい寝息を立てる小柄な恋人の髪を梳いてつらつらと馴れ初めを思い出す。
酷く他人を恐れるくせに大層な寂しがりで、極度に人見知りをしながら、心を許した相手にはとても人懐こい一面を見せる関口への興味が、何時しかその形を変えていた。
関口への興味が好意をへて庇護欲へそして恋愛感情へと芽吹き育っていく有様は今まで他人に特別な興味を持たずに過ごしてきた中禅寺にとっても新鮮な驚きに満ちていて……
中禅寺はあの手この手搦め手で関口を口説き落とし、勢い余ってそのまま押し倒して既成事実付きで学友から恋人へと昇格してから二つばかりの季節が過ぎた。
そんな春の日のこと。
朝から中禅寺と関口の部屋は慌しかった。
「関口君。君は一体何度僕に起こさせたら気が済むんだね。まったく寝汚いにも程があるだろうが」
叱り付けられた関口は裸の肩をビクリと竦ませ、情けなく寄せた眉の下でうるっと瞳を潤ませる。
が、今は泣いている場合でない程に時間が切迫しているのだと時計を指差す中禅寺に睨まれた。
関口はぐっと涙を堪え、布団の周りに散らばった衣類を慌てて掻き寄せて紅の刻印が無数に残った肌を覆っていく。
「ほら、シャツの袖はこっちだ…手をこっちによこしたまえ」
焦れば焦るほど関口の手元は強張り、見かねた中禅寺がシャツを着せつけボタンを留めてやる。
「あ…あり……ありがと……」
「礼をいう暇があったら、朝をきちんと起きるようにしたまえ。この貸しは今夜…返してもらうからね」
「そっ…そんな……お…一昨日も……したから、昨夜は嫌だって言ったのに……君が朝方まで……」
赤面し、涙さえ浮かべて抗弁する関口は酷く愛らしかった。
しかし小動物めいた愛らしさに逆に嗜虐性を刺激された中禅寺はわざとらしく鼻を鳴らし素っ気無い風を装う。
「ふん。君に体力がないのが悪いんだろう」
そのなけなしの体力を夜毎に消耗させている本人が言うのだから性質が悪い。
「第一、今は寝坊の原因を究明するよりも準備をする方が大事だろう。全く君は世話が焼ける」
云いながらも、ボタンを留め終われば次はズボンを穿かせる。なんだかんだ云っても中禅寺は彼なりに関口を愛しく思っているのだ。
そんな遣り取りを交わすうちにも時計の針は無情に進む。
本当に遅刻寸前の時間であると気付いた、二人は、否、中禅寺は彼にしては珍しく慌てて関口を追い立てて部屋を出たのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「まったく、君に付き合っていたら、こっちの方が参ってしまうよ」
際どい所であったが何とか滑り込んだ講義の終了後、待ちかねるように中禅寺の小言が再開された。
「だいたい君は……?…聞いているのかね関口君」
何時もは苦言を呈すると、おどおどと上目遣いに此方の顔色を伺う筈の――それが中禅寺を却って喜ばせているとは知らない――関口が、何かに驚いた様に固まっている。
「どうしたんだい、関口君」
「いや……その………あの……………」
怪訝に思った中禅寺が尋ねたが関口は酷く口篭り要領を得ない。
「どうしたんだ、はっきり云いたまえよ」
「だって……その……中…禅寺………」
「僕がなんだい。はっきり云わないと、分からないじゃないか。だいたい君は……」
延々と続きそうな中禅寺の説教の気配を感じた関口は意を決して、大きく息を吸い込み、思いっきり声を出した。
「中禅寺!ズボンの前が開けっ放しになってる!」
室内に一瞬、凪いだような沈黙が落ちた
そして潮騒に似たざわめき、周囲からの視線が集中する。
中禅寺はその痛々しい空気の中、素早く服を直すや幽鬼のごとき顔つきで関口に向き直った。
「君はTPOという概念が欠落しているようだね。時と場合に相応しい話し方があるだろう。その辺りも含めて、じっくり躾け直してあげよう。身体に。しばらくはまともに眠れないと覚悟したまえ」
囁くような声だったが、関口は戦慄に凍りついた。
その関口を引き摺るように、寮の自室に戻った中禅寺は翌日まで…関口は三日後まで姿を見せる事はなかった。
それ以降、中禅寺の私服はすべて和装になったのだと、関口は涙ながらに語っている。
END
…い、色々すみませ……><
無料配布の折本のSSを加筆修正、携帯サイトに載せていた文を更に修正です。
に何載せてんだ、京関サークルが。
管理人の小2病は末期です。