*PIYOPIYO*
平山×カイジ 越境SS 090517無料配布
*果てしない馬鹿ップルで平山さんの頭が相当弱いです。苦手な方はリターン推奨
「ご馳走様でした」
食事を終え、手を合わせた平山と自分の食器を重ね流しへと移動していくカイジ。
その背後に長身の人影がぴよぴよと付きまとう。
部屋を横切るとぴよぴよ。
同じ速度、同じ進路でぴよぴよ。
台所に向かう前に、ふと思い出して玄関の戸締りを確認に行っても背後にぴよぴよ。
洗濯物の具合をと洗濯機を覗きに行ってもぴよぴよ。
ぴよぴよは自重を知らないらしい。
「…あのさ……」
「何?何?なぁに?カイジさんっ?」
振り返れば、待ちかねたと、「ぴよぴよ」こと、平山が満面の笑みで応じる。
手の中には、トレイに乗り切らなかったコップを一つ――実際には、乗り切らない事を計算して後から平山が水を飲みたいと台所から持ってきていた――言い訳がましく持って。
「食器くらい一人で運べるし」
頭の中身もぴよぴよしている相手には、何万回言ってもムダだと知りつつ何万回と一回目に言ってみる。
「二人で運んだ方がほら、効率とかがね…気にしないでよ、オレ、カイジさんと話したいしぃ」
そんな不毛な会話を供に、カイジが台所へ向かっても、やはりぴよぴよは付いてくる。
「居間に居てくれても話しは出来るよ?」
ぴよぴよを引き連れたままカイジは台所に着いた。
「やだ…」
ぷう。と頬を膨らませた平山がカイジ一歩近づく。
「やだぁ……オレ、カイジさんと離れると死ぬ。死んじゃう。シニタクナイシニタクナイ」
馬鹿ほど繰り返したやり取りでこの後の展開まで学習したカイジは素早く食器をトレイごと流しに置く。と同時に抱きつかれた。
「カイジさんと離れるの、嫌だぁ」
「離れないから…いい加減学習してよ、平山さん」
ため息交じりに返答し、間一髪、でかい図体のぴよぴよの被害を避けられた食器を遠い目で見てしまう。
以前カイジが食器を運んでいる間に我慢できずに抱きついて持っていた皿が全滅。小一時間ばかり正座で叱られてから、カイジに嫌われたくないぴよぴよは少しだけ待つことを覚えたらしい。
でもそれももう限界。
「カイジさんと離れたくないよ……」
ぐりぐりとカイジの肩口に秀でた額を擦り付けてくる平山の手が、幼い無邪気な子供染みた言動を裏切って、当然の顔でカイジのシャツをジーンズから引き出していく。
それにすら慣れた自分はどうなるのだろうと思いながらカイジは、自分にしか懐かない銀色の巨大なひよこの頭を撫でてやる。
整髪料で流れを付けた髪は意図があるかのように愛しげにカイジの指に絡む。
「嬉しいなぁ…オレ、カイジさんに触るのも好きだけど、撫でてもらうのはもっと好き」
嬉しい嬉しいもっとと一層擦り寄ってくる。
この頭の中には常人を遥かに凌駕する驚異的な計算力と記憶力を誇る頭脳が詰まっているなど、ぴよぴよしている姿からは到底想像が出来ない。
「平山さん……そんなに心配?オレは何処にも行かないし、平山さんが好きって、ずっと言ってるのに信用できないの?」
引き出したシャツを上から順に釦を外していく平山のしたい様にさせてやりながらカイジが問い掛けた。
「う…ん…心配っていうか……足りない」
何時だって切ないんだ。と言われたらカイジも弱い。
「カイジさんは…足りてる?オレは足りてる?」
「足りる…と思ってるの?バカじゃないの平山さん」
愛されれば愛されるほど好きになる。満たされるほど飢えていく。幸せで切ない事ぐらい分かれと、振り返ったカイジの瞳が甘すぎる恨み言を告げていた。
「……そうだよね……ごめんね……好き」
泣きそうな顔で平山は笑う。
彼の赤いレンズの中できっと自分も同じ顔をしている気がした。
互いだけを感じる距離で唇が交わり、平山の掌が肌を弄り始めた。
肩を滑るシャツから自ら腕を抜く。
一時満たしあって、更に互いに飢えるための儀式の共犯になりながら、互いに「ごめん」と呟いたのは何に詫びていたのかカイジにも平山にも分からなかった。
【END】
後書き:平山はカイジの後追いする癖があればいいと思いました焼き土下座
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